■ゆきずり小町




芝居がはねて 劇場(こや)を出りゃ
雪がちらちら 山谷堀
 骨身にこたえる底冷え日暮れ
 目に焼きついた あでやかさ
 舞台でみえ切る羽左衛門
 声色まねれば身が火照る


駒下駄 町屋にひびかせて
急ぎ足どり あねさんよ
 おぬしも芝居で夢心地かい
 お髪にかざした手ぬぐいを
 つまんで くわえて 流し目は
 浅草小町だ 世辞じゃない


雪降るなかを すまないが
船頭 深川 屋敷まで
 今宵は駕籠より ゆらゆらゆれて
 帰りは船路と しゃれてみた
 大江戸風情を独り占め
 酒代はずむぜ 魯のさばき