甲田四郎詩集『くらやみ坂』抄
『くらやみ坂』目次


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ゴジラ



一九五四年私は十八歳
映画ゴジラの第一作を弟と四人並んで見た
水爆実験の放射能で突然変異を起こして
巨大になって目覚めたゴジラ
もう出るか今出るかと待っていたら
砂浜に残された巨大な足跡
暗い山の稜線
耳を聾する咆哮一声
出たあ!
ワクワクした
あれからゴジラは死に代わり生き代わり
今も活躍しているわけだが
二〇〇四年私は四歳のユリと
二歳のタクミを抱っこしてみて気がついた
現れるのはいつも卵から孵ったばかりで
人間でいえばおしめをつけた幼児ではないか
なん十回もの水爆実験で
身寄りも頼りも皆殺された
たった一人の生き残りではないか
戦国時代には
泣く力も失い横たわる老人や幼児たち
村々の累々たる死体から
凝った無数の怨念が抜け出て集まって
巨大な赤んぽうの姿になったという話がある
ゴジラの大きさは放射能の毒と
無数の同類異類の死体から出た怨念の
大きさなのではなかったか
たった一人目覚めて泣く
山をよちよちと降りてくる