甲田四郎詩集『送信』抄
『送信』目次

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特攻機の基地には小菊の群れが咲いていた
それを人が特攻花と呼んだのだった
知覧の記念館にある特攻機は
兵器というよりはりぼての玩具のようだ
一木一草余さず動員された戦争末期
爆弾を抱えてようやく飛んでいって
敵艦に突っ込む前におおかた撃墜されたという
記念館の壁という壁に並んでいる特攻隊員の写真
所々剥がされて空白になっている
朝鮮出身隊一員の写真があった跡だ
現韓国の遺族が
かれは日本人ではないと言ったからだ
かれは日本人ではない
私はそのことを知っている
かれは韓国では祀られているだろうか
私は判らない
記念館は空白について黙っている
日本国がかれの国を奪い言葉を奪い
その身を殺したことを隠している
特攻花
黄色に血がにじんだ色
特定外来生物
(日本の生態系に影響を及ぼす恐れがあるので
移植、栽培が禁止されている)
隠されたもののために咲いている