甲田四郎詩集『送信』抄
『送信』目次


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暮れてから


見えない手に背中を押されるように
あっちの店がバタン下ろしたシャッター
そっちがバタン下ろしたシャッター
もう二度と開かない響きだ
シャッターの下から涜れ出ていた灯が消え
西の空の底のどす黒い赤い線が消え
暮れきった
二人暮らし
親の介護はすんだ
どっちか介護するかされるかになるまでの間
それは省略されることもあるが
それぞれ自分の歯をみがいてシャッターを開ける
外へは出ないこのへんの店は田只うものがない
まだやっている店はそんなのばかり
寒いからストープの前で股を開いてテレビを見る
楽である
テレビが座して介護を待つなと言う
高齢者は身体を動かせ動かせばやがて頭が回りだす
するともっと身体が動くするともっと頭が回る
言葉が出なくなった詩人が詩を書き出すように
だんごが売れなくなっただんご屋がだんごを作りだすように
外へ出る速足で歩く
寒い暗い腹へった
テクテクテクテク、テクテクテクテク
回転すし屋が開いていた
すしのベルトは回転しない私の頭のよう