甲田四郎詩集『送信』抄
『送信』目次

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鉢巻きの若い男が一人愛想よくもなく悪くもなく
いちいち客の注文を受けていちいち握る
一人若い男がビールを飲み飲みすしを五皿食って
熱燗一本くださいと言って
一息に飲んで立って行った
ドリンク剤みたいと私が言った
最後の皿に鉄火巻きが二コ残っている
ストレスを置いて行ったと女房が言った
私が後を託すのは
あのようにして家に帰る若い者
このようにしてすしを握る若い者
希望という名の
こないだ連れてきた小学五年の孫だ
友達の父親がイタリヤ料理のシェフで
パスタを教えてもらって家で三種作ったうまかったそうだ
誕生祝いにフライパンを買ってもらったのだと
一三六円の皿ばかり十皿食った
中とろたべなと私が言ったら(二五七円)
中とろとうれしそうに叫んだ
見えない手に背中を押されるように
私達が食ったイカ、アジ、ネギトロ、イクラ、中とろ
何シーベルトだったか