甲田四郎詩集『くらやみ坂』抄
『くらやみ坂』目次

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夜の駅でまたまた人身事故の放送を聞く
私はため息ひとつ出す
夏回る
一段一段階段を上ってトイレの電気の
「夜が更ければ輝き出す卑小な希望」の
前を通って眼下の(何も象徴しない)
ホームの電気が一塊ずつ消えるのを見る
満員の最終電車を汗まみれで下りて
ふだん通らない淋しい道を歩きだせば
目の前をぺタ、ぺタ、ぺタ、ペタ行くのは
昼間の足ではないかと思えば
ペタバタぺタバタ駆け出してコンビニに飛び込んだ
今日は絶望が三つ三本の電車を止めた
絶望しない私は資本主義の
白い明るい電気の中をさんざん回って
たどり着いた戸口を開けて閉め
中の戸口を開けて閉め
卑小な希望の灯を点けて消す