甲田四郎詩集『くらやみ坂』抄
『くらやみ坂』目次

 前頁


あA銀行、そこだわ病院とおばさんは行ってしまった
また人が来てめまいは経年変化なんだってさと言う
年取れば頚椎が擦り減る、擦り減ればめまいが起きるって
また亭主が出てきてイヤ三半規管の異常だろう
医者行けよと言って引っ込みながら左へ曲がっていく
女房は歩けば右へ曲がるのだ
テレビが拉致拉致新聞が拉致拉致週刊誌が拉致拉致
拉致てまじないだ
拉致てまじないだ
非国民て言葉出てこいって
また亭主が出てきて医者行けよと言って引っ込む
知らないおじさんが顔を突っ込んで
○○会社てどう行くのと言う
バイクが左から右へ駆け抜けていく
早く言ってくれおれ面接に行くんだ時間がないんだ
救急車がピーポーピーポー
うるさい と女房は怒鳴った
世の中がシンとした
と思ったらよけいぎやあぎゃあ言い出した