甲田四郎詩集『送信』抄
『送信』目次


送 信



休みの午後部屋に掃除機をかける
明るい日差しに畳に挨と毛がいっぱい見える
隅には綿ぽこり
ワウワウ吸い取る
フィルターに吸い取りながら吐いている空気は
ゴミを除いたきれいなものだ そうではないか
私は掃除機と一緒に吸いながら吐いている
昔バキュームカーも吸いながら吐いていた
だからどうだというのではないが

暗い天井に日光が反射しているキラキラ
詩の閃きのようだ
誰か遊んでいると思ったら
交差点の向かい
鞄を下げて立っている男の腹部でキラリ
また日光を反射した ベルトのバックルが

送信している 自分で気づかないで
男が自分の些細な輝きを
私に 街路樹に 空の果てに
朝からも日暮れからも遠い交差点で
ふくれた鞄のように疲れているよ
いるよ いるよ
私は光を反射させるものを持たないが
空へ目を投げてゴミを吸いながら吐いていて
私もまた送信する者だ そんな気になる
そしてまたある日私はゴミを吸いながら吐いている
交差点にまた鞄をさげた男が立っている
腹部からキラリ送信するかと思ったが
些細なことでも二度はない
空の果てまで