新宿の女1/2

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新宿の女



親をころしたいよ と女がいう
おれは喫茶室のざるみたいな椅子をぎしっとゆする
隣席では男たちが
そらの見えるところはどこ? と訊いている
ハマのチエコは男だったぜ
おれの目の前の女は
ショートケーキにフォークをたてる 皿をかちんと鳴らして
夜更けの街にたちどまり
ガラス張りのこちらを見ているだれかがいる

ころしたいよといった女は申しぶんなく美形だ
ビアガーデンがありますけど
ウェイトレスがていねいに答えている でももう閉店しました
ごあいさつだが商売熱心でよろしい
高校一年のとき家出して三日でつれもどされた と女はいった
あのとき部屋をかりたの アパートの廊下をテーブルに指でえがく
玄関があって 廊下のこっちで ものおきみたいなとこ
借りるときのカネはどうしたんだ
気ままに生きているわりに現実的ね 女はせせら笑う
母親のをくすねたのよ
もう部屋なんてものじゃなかった ものおき
おれがいま住んでるとこもそうさ

サトコも男だったりしてな。かもな。まさか。
ラストオーダーをとりにきたウェイトレスに
おれたちふたりで用済みの首をふる
こんやふたりで同じことをしたのはそれだけだ
何時まで? むこうの男が訊いている。あと十五分か
なにか食べる? 男たちが顔を寄せ合う
やだねカマっぽいのは それも集団だぜ
おれならやってくれると思うのか
親父をころしてくれといったのもいたな 養子だった
そいつの女房が高校生みたいなヤツとできちまった
ころしたい人間にはことかかぬってわけだ