めぐりの悪い時間の流れに乗って ぼくらは暮らした

魚とのわかれ


空を見上げると 魚の骨が
白く光って泳いでいる
親しかったあいつとと さいきん
わかれたばかりだ
骨になるのが早すぎるよ
冗談めかすじぶんが
おろかしくて 好きだ

長いつきあいだった ほんとうに
長いつきあいだったか
出会いから別れまで
ごくごく短い時を
過ごしただけではないのか
ふたりのあいだを
めぐりの悪い時間が
流れていただけではないのか
不器用な生き方を
時間のせいにはできないけれど
あいつもおれも それぞれが
右手で従属
左手で挑発をくりかえす
すさんだ暮らしだった

そうしてひとつのドアを出入りして
ぶつかり合っては涙をながし
うろこをはがし ときには
あぶくのように笑ったが
ほかに選びようがなかった
それはそれで すさんだなりに
幸福だったといわねばならぬ

挑発するあいてを失い
隷属だけが残ったか
まといつく胸びれ背びれ
尻びれ尾びれの幻覚を
ふりはらいながらの暮らしが始まっている
生きた心地はしないのに
生きのいい魚
を見る眼にかこまれて
生きている
空を見上げると 魚の骨が
白く光って泳いでいる
あいつなのか おれ自身なのか
ときどきわからなくなる