わたりどり



うすい光をやぶらないように
羽音を殺して 鳥が
北へわたるらしい
春をちからづくでおさえこんだ
三月の冷気が
あのあたりでこねられ
熱を帯びているのか
わずかに うずを巻く
うすい光は 朝にも
夜にも属し
いずれともわからぬあわいから
影がもれ
影はしだいにふえ
三角形の群れをなして
鳥が見えてくる
層をなす うすい光の
底辺には鉄の階段があり
透明な小エビのようなものを散らかして
かたい靴音をたてて昇るひとがいる
灰色の大きなタンクをめぐり
閉じられたままの鉄の扉を
たぶん鳥の足のような
骨ばった細い指で
コツコツたたく
不安な音を聴いているのは
そのひとだけだ
そんないつもの風景を
小さな家からながめていると
けさは わたる鳥の三角形の群れを
帽子にして
足もとだけがかがやく街道を
ひた走るひとがいる