サティスファクション 1/4

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サティスファクション



何度も間違ったのだろう
見知らぬ人になって行く老いた母は
何度も違うスイッチを押したのだろう
かけて寄越した誰かが
繰り返し自分の間違いを確認したから
居ないという意味が
結局は解らなかったのだ
色んな機能の付いた電話機は
ひたすら相手を呼び続けることはせず
直ぐに黒い箱の中へもぐり込んで
さびしい暗号を抱きに行く
電話の呼び声は消され
間の抜けたピッ、ピッ、ピッ、という断続音に変る
死の心音のよう
何千キロも離れているかも知れない
どこかの土地
距離も名前も
もう確かめようとは思わない
生れたベッド
生れた女
待たれたためにひとりであり
しかもすべてである
それらの消滅と死が平気でイメージされる
開かれた名簿なら
読み上げることができる
しかし呼ぶべきひとりの人の名もないとは
ひとりの人の名も
この存在が長い時間をかけて禁じてしまったとは
真実のように恐ろしいことだ
恐ろしい悲しみだ

(幾枚も幾枚も、赤錆びた鉄の紙を貼り重ねて、高炉に似た宇宙船を作り
続けた父よ。そこを掃除すべきではない。でないと、また次のごみ置き場
を作らなければならない。そこで腐敗の源へ至ることだ。燃える石や燃え
る水があった時代の。それは我々の内臓でふ化したものだ。全く個性のな