サティスファクション 2/4

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い各々の箱からよろけながら出て来ると、ひどく傷付き易いと信じている
ために、肩を落し足を引きずって歩く。あるいはポケットに手をつっ込み、
大き過ぎるバッグを前後に揺らしながら歩く。こうして、次なる大箱の中
に自らを見出すまで、そうする。膝を折り、四肢を固定し、死者の前方を
凝視する)
硬貨の収納場所を捜して、鉄工所、ごみ置き場、ボイラー室、魚市場、駐
車場、きれいに片付けられた、既に使用されていない、ただひび割れたコ
ンクリートの床が共通であるそれらの場所を、 通り抜ける。 仕事を称え
よ! 仕事を愚かしい隅へ追いやることで、称えなければならない。それ
が、どのようなものからも切り離された、ひとつの絶対であるまでに、ひ
とつの永遠であるまでに。かくして隅に投げられた一枚。老人達が最後に
痴呆の口をもぐもぐさせ、目で追う、その訳の解らないしろものを抱えて。
先客があり、一台しかない電話機には硬貨が詰め込まれたばかりだ。
それは全く逆の行為である。
(私と言えば)ほんの少し前、少し離れた場所で、引き出しの中から硬貨
を回収して来たのだから。ひとりの男が鍵を開け引き出しを出すと、もう
ひとりの男が力まかせに硬貨を詰め込む。余分の一、二枚のために顔を紅
潮させている。銀行の雑役係はそれらに立会っているに過ぎないが、鍵を
受け取るのは彼でしかない訳だから、一種の威厳を持って、この光景を記
憶に留めている。というより、その光景を現実のものとし、権威を与えて
いるのはそのことがあるからだ。運搬して来た二人が戻ると、準銀行員は、
私に気付いて代案を出すのだ。それはいささか風変りなために、一層彼に
自信を、ややプライベートな誇りを感じさせもしたのである。硬貨をしま
い込んでしまうのに充分な電話機が、実は他にもあると言うのだ。しかし
ここではない。まさか、私が空にして来た電話機のことを言っているので
はないだろうな、そうではなく、実はここにあるのだ。それは見えない、
それはここではないと言わざるを得ないが、便宜的にこの下の階にあると
理解することだ。ひとっ上の階であっても、床続きの隣のフロアーであっ
てもいいのだ。
我々がターンしたのか、部屋がターンしたのか。私が言った通りでしょう
と言う声と共に、男は消えていて、同時に私は自分の仕事そのものを忘れ
てしまう。「これらの職務が永遠に続くのであれば、行為そのものの重い
引き出しから、満足を引き出さなければならない」というより、蒸気で濡
れぎらぎら光る、この世のものでない電話機の穴に、必死で硬貨を詰め込
み、その理由の知れない恐怖で、記憶の途中を失ってしまったと考えた方
がよいだろう。そこは暗かったのだろうか、人間の目には明る過ぎる暗さ。
光のざわめきのようなものが、長いテーブルの手前から始まって、奥の方
へ流れて行くのだった。それは確かに人間の表面の光輝だった。昆虫には
知り得ない、知性の偉大なる存在物である人間にだけ理解できる暗号の光